内科診療について


循環器内科
・心臓、心臓病 ・弁膜症
・狭心症・心筋梗塞 ・心房細動
・期外収縮 ・心電図・ホルター心電図
・BNP

 心臓、心臓病

心臓、心臓病について

● 心臓の役割と構造

 心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を果たす、とても大切な臓器です。心臓には4つの部屋があり、上の2つを「心房」、下の2つを「心室」と呼びます。血液は、

全身 → 右心房 → 右心室 → 肺 → 左心房 → 左心室 → 全身

という順番で流れています。心房は血液をためておくタンク、心室は血液を全身や肺に送り出すポンプのような働きをしています。心房と心室の間や心室の出口には「弁(ドア)」がついており、血液が逆流しない仕組みがあります。

● 心不全とは

 心不全とは、心臓のポンプ機能が弱くなり、全身に血液がうまく行き渡らなくなる状態です。原因には高血圧や糖尿病、心筋症、不整脈、弁の異常、冠動脈の病気などがあります。 急に心臓の機能が低下すると、強いだるさや息苦しさ、血圧の低下やめまいが現れます。徐々に進行する場合は、足のむくみや息切れ、食欲不振が見られることがあります。特に高齢の方では「年のせい」と見過ごされることもあります。 心不全は社会の高齢化に伴い増加しており、早期の検査や治療が重要です。高血圧や糖尿病を適切に治療することで予防につながります。

● 不整脈とは

 心臓は電気信号によって動く、精密な仕組みを持っています。心房と心室が順番に動くと血液が効率よく流れますが、これをコントロールするための電気の通り道があります。 心房の上部にある「洞結節」から電気信号が発生し、心房を収縮させます。この信号は「房室結節」を通り、心室に伝わって収縮を引き起こします。この電気信号の流れに異常が起きることを不整脈と呼びます。心電図で診断し、必要に応じて薬やペースメーカー、カテーテル治療を行います。

● 弁膜症とは

 心房と心室の間、また心室の出口にある弁(ドア)がしっかり開閉しない状態を「弁膜症」といいます。弁が開きにくい場合を「狭窄症」、閉じたときに隙間ができて血液が逆流する状態を「逆流症」と呼びます。聴診器で異常が疑われた場合は、心臓エコー検査で血液の流れや弁の状態を確認します。

● 狭心症・心筋梗塞とは

 心臓に酸素を届ける血管は「冠動脈」と呼ばれます。この血管が狭くなって血流が悪くなる状態を「狭心症」、血管が詰まり心臓の筋肉がダメージを受ける状態を「心筋梗塞」といいます。動脈硬化が原因で高齢者に多いですが、血管が一時的に収縮して細くなることがあり、若い方でも起こる場合があります。突然の胸痛がある場合は注意が必要です。

● 最後に

 心臓病には、不整脈や心筋梗塞のように突然発症するものから、徐々に進行するものまでさまざまです。息切れや動悸、胸の痛みなどの症状が出た場合は早めに検査を受け、原因を調べましょう。また、高血圧や糖尿病をしっかり管理することで心臓病を予防することができます。健康的な生活を心がけて、大切な心臓を守りましょう。

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 弁膜症

弁膜症について

 「心臓、心臓病について」を事前にご覧いただくと、さらに分かりやすいです。

弁膜症とは?

 心臓には、血液の流れをコントロールする「弁」があります。弁に異常が起こると「弁膜症」と呼ばれる状態になります。

 ・弁が開きにくくなる「狭窄症」

 ・弁が完全に閉じられず血液が逆流する「逆流症」

 の2種類にわかれ、代表的な弁膜症には以下があります。

 ・大動脈弁狭窄症:心臓の出口が狭くなる

 ・僧帽弁逆流症:左心房と左心室の間で逆流が起こる

どのような症状がでる?

 弁膜症になると心臓から全身に送り出す血液量が減少するため、心不全となり、次のような症状が見られます。

 ・むくみ(特に下肢)

 ・疲れやすい、息切れ(運動時や階段の昇り降りなど)

 進行すると入院が必要となることもあります。大動脈弁狭窄症では失神や狭心症のような重い症状が見られます。

診断は?

 聴診器で心臓の音を聴くと、弁膜症が疑われる「雑音」が聞こえることがあります。この場合、さらに心臓超音波検査(エコー検査)を行い、弁の状態や血液の流れを確認します。エコー検査は痛みがなく、安全に行える検査です。

治療は?

 弁膜症の根本的な治療は、壊れた弁を修理または交換する手術です。重症の弁膜症や中等度で心不全への影響が大きい場合に検討されます。最近では一部の弁膜症にはカテーテル手術が登場し、さらに拡がっていくと思われます。軽症であれば血圧管理などで心臓の負担を軽減することで悪化しないようにつとめていきます。

感染性心内膜炎について

 弁膜症があると弁が傷み、細菌がそこに付着して感染性心内膜炎という病気を起こすことがあります。この病気は命に関わるため、緊急手術が必要になることもあります。虫歯や歯周病、皮膚疾患(アトピー性皮膚炎など)があると血液に細菌が入り、感染性心内膜炎のきっかけとなることがあるので、しっかり治療を受けましょう。

最後に

 弁膜症は「息切れ」や「むくみ」といった、「年のせい」と見過ごしがちな症状がでます。カテーテル手術の登場で高齢の方でも治療の選択肢が広がっています。「疲れやすい」、「すぐに息切れがする」などあれば、医療機関で相談してみてください。


参考 日本循環器学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会/日本心臓血管外科学会.2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン
   日本循環器学会.感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)

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 狭心症・心筋梗塞

狭心症と心筋梗塞について

 「心臓、心臓病について」を事前にご覧いただくと、さらに分かりやすいです。

狭心症と心筋梗塞とは?

 心臓に酸素や栄養を送る血管(冠動脈)が細くなったり詰まることで、心臓の筋肉が酸素不足になる病気です。

・狭心症:血管が細くなり、心臓が頑張って動く際に酸素が足りなくなります。

・心筋梗塞:血管が完全に詰まり、酸素が届かず心臓の筋肉が傷んでしまいます。

 動脈硬化が原因のことが多く、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙、加齢、家族歴、男性などがリスクです。

どんな症状が出るの?

 胸痛が代表的な症状で、冷や汗や痛みが肩・あごに広がる場合もあります。高齢者や糖尿病では症状が分かりにくいことがあります。今までにない胸の痛みが続く、軽い運動でも痛みが出る場合は、ためらわず救急車を呼びましょう。

・狭心症:運動時に胸が痛くなり、休むと改善します。散歩や階段の登りで休憩が増えたり痛みが出るなど。

・心筋梗塞:突然、強い胸の痛みが起こり、休んでも改善しません。不整脈が発生し、命に関わることがあります。

診断について

・心電図:心臓へのダメージが現れます。狭心症では運動などで負担をかけて検査をすることもあります。

・超音波検査:心臓の動きが悪くなっていないか確認します。

・血液検査:心臓へのダメージが現れます。心電図よりも結果が出るのに時間がかかるのが欠点です。

・カテーテル検査やCT検査:血管の状態を詳しく評価します。

治療方法

・カテーテル治療:風船やステントで血管を拡げます。

・バイパス手術:別の血管を使って血流を確保します。

 心筋梗塞では「早急な治療」が重要なためカテーテル治療が行われることが多いです。狭心症では血管の状態、年齢やこれまでの病気など総合的に判断してカテーテル治療とバイパス手術を選択します。

予防のために

・生活習慣の改善:血圧、コレステロール、血糖値をしっかり管理することが大切です。

・運動習慣:軽い運動を日常に取り入れましょう。

・禁煙や適正体重の維持も予防に役立ちます。

最後に

 心筋梗塞は一刻を争う病気です。「この程度で…」と我慢せず、今までにない胸の痛みや違和感があれば、すぐに病院を受診してください。早めの対応が、命とその後の生活を守ります。


参考 日本循環器学会.急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)

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 心房細動

心房細動について

 「心臓、心臓病について」を事前にご覧いただくと、さらに分かりやすいです。

心房細動とは?

 心房細動は心房が正常に動けず、細かく震えるだけになる不整脈の一種です。そのため脈が不規則になり、心臓全体の動きも乱れることがあります。日本では高齢化に伴い、心房細動の患者が増えており、約1%の人に見られるとされています。特に、男性や高血圧、糖尿病、心疾患、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺の病気、飲酒、喫煙がリスク要因とされています。

 心房細動には、一時的な発作性心房細動と、7日以上続く持続性心房細動があります。多くの場合、発作性から始まり、持続性へ進行します。発作時に症状が出る方もいれば、無症状の方もいます。

心房細動が引き起こす問題

 心房細動があると、血液の流れが悪くなり、心臓内で血の塊(血栓)ができやすくなります。この血栓が脳に流れると「脳梗塞」を引き起こします。また、心臓の機能低下による「心不全」や、動悸の原因にもなります。そのほか、認知症や入院、死亡のリスクが増えることも報告されています。

治療方法

 心房細動の治療は主に2つの方向性があります。不整脈を抑える治療と、不整脈はありながらも心拍数をコントロールし心臓への負担を減らす治療です。また、最近ではカテーテルを使った「アブレーション治療」も一般的になっています。この方法は、発作時の症状がない方でも将来のリスクを減らすために勧められる場合があります。

 一方で、脳梗塞の予防も非常に重要です。特に、75歳以上や高血圧、糖尿病、心不全などの疾患を持つ方には、血をサラサラにする抗凝固薬が勧められます。最近では発作性心房細動よりも持続性心房細動が脳梗塞のリスクが高いこともわかってきています。また、血栓ができやすい部位を閉じる「左心耳閉鎖術」により、脳梗塞を予防しつつ薬による出血リスクを減らすことも可能です。

最後に

 心房細動は高齢化とともに増える不整脈です。心臓や全身に様々な影響を与えるため、早期の診断と予防が重要です。もし動悸や脈が乱れる感じがする場合は、病院での検査をお勧めします。


参考 日本循環器学会/日本不整脈心電学会.不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)
   日本循環器学会/日本不整脈心電学会.2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン
   日本循環器学会/日本不整脈心電学会.2021年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版
   日本循環器学会/日本不整脈心電学会.2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版不整脈治療

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 期外収縮

期外収縮

 「期外収縮」は日常的に見られる不整脈の一種です。初めて耳にする方も多いかもしれませんが、健康診断で指摘されることがあります。「心臓、心臓病について」を事前にご覧いただくと、さらに分かりやすいです。

期外収縮とは?

 心臓は、「洞結節」という部分から送られる電気信号によって規則正しく動いています。洞結節以外の場所から電気信号が発生して心臓が収縮することを「期外収縮」と呼び、これには以下の2種類があります:

・上室(心房)期外収縮:心房で発生

・心室期外収縮:心室で発生

健康に影響はあるの?

 期外収縮は健康な人でも見られることがあり、多くの場合は問題ありません。ただし、注意が必要な場合もあります

・背景に心臓病がある

・「心室期外収縮」が頻回に出ている

・「心室期外収縮」が3拍以上連続して発生する

 症状がある場合はもちろん、心電図検査で偶然異常が見つかった場合も、一度医師に相談してください。

診断・評価の方法

 期外収縮は心電図検査で診断できます。症状などに応じて、以下の検査を行うことがあります:

・ホルター心電図(24時間心電図):期外収縮の頻度、自覚症状と不整脈の関係を評価

・運動負荷心電図検査:運動中による不整脈の変化を評価

・心臓超音波検査など:心臓機能の評価、心臓病が背景にないか評価

治療について

 期外収縮の治療が必要かどうかは状況によります。以下の場合は薬やカテーテルでの治療が検討されます:

・動悸や不快感などの症状がある

・ホルター心電図で「心室期外収縮」が頻回に出ている、3拍以上連続して出ている

・心臓の機能に影響がある場合

 背景に心臓病がある場合はその治療も必要です。日常生活では、カフェインやアルコールを控え、睡眠時無呼吸症候群などないか注意します。症状が軽い場合は、経過観察のみでよいこともあります。

最後に

 期外収縮はよく見られる不整脈で、健康診断などで指摘されることがあります。症状がない場合でも、心臓病が隠れている可能性もあるため、一度医療機関で確認しましょう。


参考 日本循環器学会/日本不整脈心電学会.2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン
   日本循環器学会/日本不整脈心電学会.2022年改訂版不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン

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 心電図・ホルター心電図

心電図検査とホルター心電図検査について

 「心臓、心臓病について」を事前にご覧いただくと、さらに分かりやすいです。

心電図検査について

心臓は電気信号によって動いています。この電気信号を手足と胸に貼る電極で記録するのが心電図検査です。この検査により以下のことがわかります:

・心拍数の記録

・心臓が正しいリズムで動いているか(不整脈の評価)

・心臓の筋肉が正常に働いているか(狭心症、心筋梗塞、心筋症の評価)

 身体への負担が少なく簡単にできるため、心臓病の初期評価としてよく行われる検査です。

どのようなときに行うか?

 健康診断や診察で不整脈が疑われたとき、または息切れや胸痛の症状から狭心症や心筋梗塞が疑われたときに行います。高血圧症、糖尿病、脂質異常症がある方は、狭心症や心筋梗塞、心房細動などのリスクがあるので、定期的な検査が重要です。

ホルター心電図検査について

 通常の心電図検査は記録時間は長くても数分程度です。より長時間の記録が必要な場合に、24時間記録できるホルター心電図検査を行います。この検査は特に不整脈の評価に役立ちます。

 検査器具を取り付けて1日過ごし、翌日に返却していただく必要があります。2日間続けての来院が必要ですが、通常の心電図検査と同様に身体への負担が少なく、より多くの情報が得られる有用な検査です。

どのようなときに行うか?

 動悸などの症状があるものの通常の心電図では検査時に症状がなく評価が難しい場合、また日常生活で特定の動作(食事や階段を上るなど)中に症状が出る場合に行います。 健康診断で期外収縮が指摘された場合、不整脈が1日でどの程度出現するかを調べ、心臓への負担や治療方針を検討します。また、不整脈治療後の再発確認にも使用されます。

最後に

 心電図検査は身体への負担が少なく、さまざまな心臓病の初期評価に役立つ重要な検査です。心臓病は早期発見が重要です。必要なときは積極的に検査を受けましょう。

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 BNP

BNPについて

 「心臓、心臓病について」を事前にご覧いただくと、さらに分かりやすいです。

BNPとは

 BNPとはBrain Natriuretic Peptide(ブレイン ナトリウレティック ペプチド)の略で、心臓から分泌されるホルモンの一つです。このホルモンには以下のような作用があります:

 ・体内の余分な水分やナトリウムを尿として排出する

 ・血管を拡張させて血圧を下げる

 身体に水分が増えて血液量が多くなると、心臓が送り出す血液の量も増え、心臓に負担がかかります。また、血管が収縮して血圧が高くなると、血液を送り出すためにさらに心臓に負担がかかります。BNPはこのような負担を軽減するために働くホルモンです。

どのような時に検査するか?

 BNPは血液検査で測定できます。値が高い場合、身体が心臓の負担を軽減しようとしていることを意味し、心臓に何らかの負担がかかっている可能性があります。息切れ、胸痛、動悸など、心臓病が疑われる症状がある場合に検査します。

 また、心不全や弁膜症、心筋梗塞などの既往がある場合は、定期的な検査で心臓への負担が増していないか、病気が進行していないかを確認します。

どのように評価するか?

 BNPが35pg/ml以上の場合、前心不全や心不全の可能性があるため、胸部X線、心電図、心エコー検査が検討されます。すでに心臓病がある場合、目標とするBNPの値は、心臓の状態によって異なります。

 BNPだけでは判断が難しい場合もあるため、診察やほかの検査結果もあわせて心臓の状態を評価します。

最後に

 BNPは結果が数値で示されるため、心電図などよりもわかりやすいかもしれません。日常的に行う検査ではありませんが、検査を受けた際にこの記事が参考になれば幸いです。

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