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NO. 308

日本脳炎ワクチンをお忘れなく

2022年5月

 「日本脳炎」なぜ日本の名前がついているのか、調べてみました。

 1871年(明治4年)に日本で最初の症例が報告されたようです。その後、1924年(大正13年)に岡山県で443人の死者を出す大流行があり、日本脳炎(Japanese encephalitis)の名前が定着したようです。100年前の岡山で大変なことが起きていました。おそらく県北でも多くの患者さんがいたのでしょう。1919年のスペイン風邪から数年後の日本脳炎ですから、今の新型コロナ以上の出来事であったと思います。

 日本脳炎は、現在でも、世界で毎年約68000人の発症があり、2万人前後の人が死亡しています。多くは不顕性感染(感染しても症状が出ない)や軽度の熱性疾患で終わり、脳炎を発症するのは感染者の100〜1000人に1人で、その数が世界で毎年68000人という事です。死亡率は5〜30%です。

 日本での発生は中高年を中心に毎年10例未満でしたが、2016年には11例の発症があり、ほとんどが関東より西の地域です。

 子どもでは、2005〜2016年の12年間に8例(生後10か月〜10歳)が報告されています。特に2015年に生後10か月の乳児が罹患したことから、日本小児科学会は2016年2月に、感染リスクの高い地域ではより早期の接種(標準的には3歳からですが、生後6ヶ月から可能です)を勧奨しました。岡山県、特に県北は100年前も現在も感染リスクの高い地域でしょうか。

 今回、日本脳炎を取り上げたのは、昨年の、津山市での日本脳炎ワクチン接種率が非常に低かったからです。例年の半分の接種率でした。
 これは、昨年の春から、製薬会社で製造上の問題が生じて日本脳炎ワクチンの供給が減ったからです。ワクチンの予約が取れない状態が続き、忘れてしまったのではと思います。
 今年に入って、ワクチンの供給は回復していますから、かかりつけの小児科医に相談してください。

 定期接種では、1期が生後6〜90か月未満で3回です。2期は9〜13歳未満で1回です。生後90か月とは、7歳半までです。小学校1年生でも1期が受けることが出来る年齢の子どももいます。年齢がオーバーしている子どもでは、年齢の制限のない任意接種として接種は可能ですが、自費となります。

 生後90か月までに3回、小学校6年生までに4回の接種です。

 日本脳炎の発症は5〜11月(とくに8〜10月)に多くなっています。

 蚊に刺される前に、母子手帳を見て、接種回数を確かめてください。

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