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NO. 279

わたしと小鳥とすずと

2019年12月

 金子みすゞ(1903〜1930)、自ら死を選び26歳の若さでこの世を去った詩人です。ゆっくりと3回は読んで下さい。

           わたしと小鳥とすずと

    わたしが両手をひろげても、お空はちっともとべないが、

    とべる小鳥はわたしのように、地面をはやくは走れない。


    わたしがからだをゆすっても、きれいな音はでないけど、

    あの鳴るすずはわたしのように、たくさんなうたは知らないよ。


    すずと、小鳥と、それからわたし、

    みんなちがって、みんないい。


          大漁

    朝やけ小やけだ 大漁だ

    大ばいわしの 大漁だ。

    

    はまは祭りの ようだけど 

    海のなかでは 

    何万の いわしのとむらい するだろう。


           おかし

    いたずらに一つかくした 弟のおかし。

    たべるもんかと思ってて、たべてしまった、一つのおかし。

    かあさんが二つッていったら、どうしよう。

    

    おいてみて とってみてまたおいてみて、

    それでも弟が来ないから、

    たべてしまった、二つめのおかし。


    にがいおかし、

    かなしいおかし。

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