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NO. 208

ハイチ いのちとの闘い

平成25年10月

 長崎大学熱帯医学研究所教授・山本太郎先生の「ハイチ いのちとの闘い」(昭和堂発行)を読みました。「西半球の最貧国」「感染症の宝庫」「崩れゆく国」等と呼ばれている国“ハイチ”での300日の生活の記録です。

 先生がハイチにいる時にクーデターが起き、命からがら助かった話(?)かと思ったのですが、そうではなかったのです。実は、ハイチでは、クーデターと同じほどの「いのちとの闘い」が貧困のために起こっているのです。

 ハイチは、北アメリカの南にある西インド諸島のイスパニョーラ島(コロンブスが「小さなスペイン」という意味でイスパニョーラ島と名付けました。)の西半分です。東側はドミニカ共和国です。島の大きさは九州の約2倍です。

 ハイチでは、エイズや結核などの病気で十分な治療を受けることもなく多くの人が亡くなっています。

 そして、ハイチの隣の国はドミニカ共和国なのですが、この国はハイチとほとんど同じ運命を1990年まではたどっていたのですが、その後の政治により、国民一人当たりの所得はハイチの8倍あります。ほんの30年の間に、同じ民族なのに大きな差が出てしまったのです。アメリカの大リーグ野球にはドミニカ出身の選手が多くいます。

 ハイチの男性の平均寿命は61歳で、15歳から60歳までで男性1000人うち258人が死亡します。ドミニカでの同じ項目の数は72歳と、165人となります。どちらもドミニカがいい数字を出しています。

 そして、子ども1000人が5歳までに死亡する数を比べると、ハイチが76人、ドミニカが27人となっています。日本は3人、韓国4人、北朝鮮は29人です。

 大人に比べると、子ども達への影響がいかに大きいかわかると思います。いつの時代も、社会のひずみは、最も弱い子ども達の命を奪うのです。

 日本でも、これまで鎌倉時代の元寇、明治維新、第二次世界大戦と、ハイチとドミニカや韓国と北朝鮮などと同じような関係になってしまう危機がありましたが、先人たちの知恵、日本人の団結でその危機を乗り切ってきました。改めて先輩たちに感謝であります。

 なにか、変な「今日も元気で」になってしまいましが、子どもの命は社会、政治に大きく影響されるという話です。

 山本太郎先生の講演が、美作医会主催であります。11月10日(日)4時30分からです。興味があり、参加希望の方は、松尾小児科まで連絡してください。

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