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NO. 206

自宅分娩

平成25年8月

私が生まれた約60年前は、年間の子どもの出生数は200万余りでした。それが、最近では約半分の100万人です。ちなみに、現在、15歳未満の人口は約1600万人ですが、なんと、犬と猫を合わせたペットの数は2000万以上にもなります。

子どもよりペットの方が多いのです。

現在も、飼い犬ならば自宅分娩でしょうが、60年前は、人間も自宅分娩が多く、私も、自宅の4畳半の部屋で生まれたと、両親が話してくれていました。今から考えれば、よく無事に出てきたものだと、産婆さんと両親に感謝であります。

60年前は、生後1カ月までの新生児死亡率は、出世数1000に対して約30人でした。それが、今では約一人です。単純に考えると、60年前は、赤ちゃんにとって、生まれてから1ヶ月間は、30倍の命の危険があったということです。

また、日本では出産後5~6日は入院しているのに、先日、イギリスの王子様が出産の翌日に退院しているのを見て少しびっくりしました。イギリスやアメリカでは医療費削減の意味もあり、出産翌日に退院するのが普通のようです。イギリスの王室も医療費削減の手本を示したのでしょう。

しかし、入院期間が短いだけが原因ではないでしょうが、イギリスの新生児死亡率は日本の3倍、アメリカは日本の4倍です。日本の医療はお母さんにも、赤ちゃんにも優しいのです。(国民一人当たりの医療費は、アメリカよりもイギリスよりも日本のほうが少なくなっています。アメリカは日本の約2倍の医療費です。)

子どもたちに関わる多くの人たちの努力のお陰で、30倍の安全が確保できた事になります。しかし、その恵みを受けるには、その恵みを受けることが出来る所で赤ちゃんを産まなければなりません。

最近、自宅分娩が増加の傾向にあると言われています。自宅分娩をするには多くの条件をクリアしなければなりません。また、仮に自宅分娩の条件を満たしたとしても、お産では何が起こるか分かりません。適切な医療を受けることが出来ず、赤ちゃんに障害が残る可能性もあります。

私の意見ですが、自宅分娩では新生児死亡率が1より多くなるのは確実だと思います。生まれてくる赤ちゃんから日本の優秀な医療を奪うってしまう事は、選択すべきではないと思います。

新生児死亡率が示すように、日本の新生児医療は世界一です。自宅分娩が増えないことを願っています。

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