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NO. 180

アレルギー性紫斑病とモーツアルト

平成23年 5月

 天才音楽家モーツァルトは35歳(1791年12月5日)で亡くなっています。その死因については、宮廷音楽家サリエリのモーツァルトへの嫉妬心かの毒殺説が有名ですが、多くの謎が残っています。最近、その疑問に答えている本に出会いました。

 腎臓病の専門の医師(小林修三氏)が書いた「モーツァルトとベートーベン その音楽と病(医薬ジャーナル社)」です。

 モーツァルトが6歳のとき、モーツァルトの父が友人に出した手紙に「息子の咽喉がやられて、熱を出したあと痛いというので診ると、足のすねにやや盛り上がった、銅貨ほどの大きさの赤く腫れ上がった発疹が、いくつかできていました。」とあるのです。現在の小児医なら、これは“アレルギー性紫斑病”であろうと診断します。そして、この病気の最悪の経過は、腎炎から慢性の腎不全です。

  アレルギー性紫斑病は、2歳〜8歳の男の子に多く、発病前1〜3週ころに上気道感染、溶連菌感染などにかかる事が多いようです。

 主な症状は、紫斑・胃腸症状・関節症状です。

1) 紫斑は左右の下肢に対称性にでて、大きさはいろいろですが数ミリから 数cmぐらいまです。急性期には押さえると痛いこともあります。
2) 胃腸症状は、激しい腹痛や血便などです。重症例では腸重積症や腸に穴 があくこともあります。
3) 関節症状は膝や足首などの関節炎が主体ですが、数日で消退します。

 この病気は、胃腸症状が強くなければ急性期の予後は良いのですが、 腎炎を合併するとややこしくなります。
 腎炎は25〜50%に合併するといわれます。大部分は自然に治癒しま すが、慢性腎炎になることもあります。他の症状が良くなっても、半年 は腎炎の合併に注意が必要です。そして、子どもの腎臓病の15%、 そして18歳未満の透析患者の約7%がこの病気が原因とされています。

 父の手紙から、モーツァルトが6歳のときに“アレルギー性紫斑病”に罹ったのは、間違いないのではないでしょうか。その後、腎炎を合併して腎不全、さらに、腎性貧血から心不全が死亡の原因と小林医師は診断しています。

  “アレルギー性紫斑病”、小児期では、稀な病気ではありません。

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