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NO.127「犬と話をつけるには」を読んで (U)
平成18年10月
前回に引き続き、2006年6月に文藝春秋から新書で発行された、『盲導犬クイールの一生』のクイールの訓練士であった多和田悟さんの本「犬と話しをつけるには」からです。
医療職者は患者さんの気持ち、患者さんの環境をよく理解したうえで、患者さんにとっての最善の医療を提供するように努めなくてはなりません。
小児科医になりたてのころ、小児科医は自分の子供が大人になった初めて一人前、お母さん・お父さんの気持ちがわかって一人前とよく言われました。
そして、今も、小児科医として、「お母さん、お父さんの気持ちになって話が出来ているのだろうか、どこまで分かっているのだろうか、どこまで理解しているのだろうか」といつも悩んでいます。さらに、「子供を亡くしたお母さん。お父さんの気持ち」「重い障害を持っている子供たちのお母さん、お父さんの気持ち」を本当に理解することは出来ないだろうと、そんなことは出来るはずないと思っていました。
“見えない辛さはわからない” 多和田さんの本の中の一章です。
見えない人のために長年にわたって盲導犬を育成してきた多和田さんの言葉です。
一番に見えない人の気持ちを知りたいと思っている方の言葉です。
「すべて失ったのではなく、方法が変わるのです。でも、見えなくなった人は自分の人生が終わってしまったと思うのです。」
「見えなくても楽しく生きる、楽しく生活することは決して不可能ではない、といま私は自身を持って、確信を持ってお伝えすることができます。」
そして、
「私はきっと、この仕事をあと何十年続けようと、見えない人の大変さはわからないだろうと思います。ただ、その困難を想像しようと思います。」とあります。
今回は、私の読書感想文になってしまいました。「病気の子供たち、お母さん、お父さんの本当の気持ちを理解する」のは何十年小児科をしていても出来ないかもしれませんが、理解しようと努力することの大切さをあらためて思いました。
「犬と話しをつけるには」、犬を飼っていない方も読んでみてください。
元気に、暖かい気持ちになります。
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