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NO.80

受動喫煙

平成14年 11月

静岡県立こども病院の加治先生は、おそらく、日本の“こども病院”ではじめて、“禁煙外来”を開いた先生です。前回は内科医の立場から、子ども達の喫煙の問題に取り組んでいる高橋先生の著書の紹介でしたが、今回は、小児科医の立場で受動喫煙(大人の吸ったタバコの煙を吸うこと)の健康への害を訴え、禁煙活動をしている加治先生の論文(BIO Clinica 17(3)、2002)を紹介します。

 【T】妊婦のタバコで胎児が窒息

@ 流産・早産・低体重児・・・に

 妊婦が受動喫煙にさらされると約200g赤ちゃんの体重が減り、妊婦1日に10本以上吸うと、約400g減ります。

A 斜視・脳出血・小児ガン・・・に

B 乳幼児突然死症候群になりやすい

C 身長・体重の増えが悪い・知能の発達が劣る

 11歳児の測定で身長が平均1.5cm低くなり、知能指数が平均6低くなります。

D キレる子ども・犯罪者になりやすい

 男児では将来暴力犯罪を起こす率が高いというデータが出ています。

E 将来不妊になりやすい(女児)

 喫煙妊婦から生まれた女児は、将来不妊になりやすいと報告されています。

 【U】タバコの煙は子への虐待!

@ 乳幼児突然死症候群の原因に

 日本では、年間約500人の子ども達(津山市の赤ちゃんで計算すると2年間に1人)がこの病気で死んでいます。英国の研究では、両親の喫煙をなくせば6割は防げると報告しています。

A 喘息・呼吸器疾患・中耳炎・・・の原因に・病気入院が増える

 気管支喘息・気管支炎・肺炎にかかりやすく、重症化します。

B 身長の伸びが悪くなる・知能の発達が劣る

 子どもの体内に鉛が蓄積して、脳細胞を障害・知能指数の低下・身体発育の悪化が起こるとする報告が数多くあります。

C 成人後の発がん率が高くなる

 夫が喫煙者の場合、妻(非喫煙者)の肺がん死亡率は1.91倍になり、特に妻の結婚年齢が20歳未満の場合は4.95倍と著しく高率となります。

 「受動喫煙がもたらす健康被害について、まず医療従事者、教育関係者がしっかり認識し、知識を広めてゆく責任を負っているものと考える。」と加治先生は括っています。

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