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NO.27

おう吐 U

平成10年 5月

 前回は、1才までに特徴的な”おう吐”の原因とその症状でした。今回は、その後の年令について書きます。

 1才以降、特に2才から10才のおう吐の原因に、いわゆる”自家中毒症”があります。これは、周期性嘔吐症とかケトン(アセトン)血性嘔吐症などとも呼ばれます。原因は不明ですが、風邪や疲労などのストレス、夕食を取らずに寝てしまう程度の飢餓などが引き金になります。そして、妊娠中毒症と同じようなことが体の中でおきてしまいケトン体という物質が体に溜まり、尿の中に出てきます。おう吐して病院へ行くときには、尿を取っていくか、診察までおしっこを我慢させて下さい。尿の中のケトン体を調べるだけで病気がはっきりすることがあります。症状は、突然おう吐を繰り返し、腹痛や頭痛を訴えます。そして、グッタリして、顔つきは”助けて下さい”という感じで、吐く息はケトン臭という特別な匂いがします。単純な”自家中毒症”だけならば、病院で点滴を受けると、ビックリするほどに元気になり、点滴が終わる頃には「お腹がすいた」と言いだします。

 ”ケトン血性低血糖症”は自家中毒症と症状はよくにていますが、低血糖が起こっています。朝、起きるとおう吐し、顔色が青白くなり、すぐにウトウトと眠ってしまいます。低血糖がひどくなると、ケイレンが起こることもあります。この病気のときは、点滴をしても泣く元気もありません。しかし、点滴をして血糖が上がってくると”自家中毒症”と同じように、お腹がすいてきます。夕食をたべなかった翌朝におこりやすく、原因は分かりませんが、繰り返す子供がいます。朝、調子が悪そうだったら、飴をしゃぶらせるか、リンゴジュウスなどを少しずつ飲ませて下さい。

 ”急性虫垂炎(盲腸)”もおう吐の原因です。子供の急性虫垂炎は少ないのですが、3才以降にまれにあります。おう吐はありますが、主な症状は腹痛です。しかし、その腹痛は大人ほど痛い場所がはっきりせず、診断が遅れることも多く、また、お腹の中の防御機構の発達も十分でなく、手術のときには腹膜炎になっていることが多くあります。腹痛を訴え、歩くときに腰を曲げていたらに、”急性虫垂炎”の可能性があります。

 ”脳腫瘍”は3才から8才に多く、10万人に対して年間 2.3人の小児脳腫瘍が発病しています。頭痛とおう吐の症状があります。頭痛は朝、起床時に多く、おう吐はおう気を伴わず突然にもどすことがあります。

 ”おう吐”は、いろんな病気の症状のひとつです。そのなかには、生理的と考えられるものから、緊急処置を必要とするものまであります。吐いている様子や、吐いたもの、便などが診断に重要なことがあります。おう吐のときは、吐いたもの・便などを、そのまま病院へ持っていって下さい。

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