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NO.26

おう吐

平成10年 4月

 今回は”おう吐”について書きます。一口に”おう吐”と言っても、子供では年令によって、そして季節によっても”おう吐”の原因が変ってきます。生まれてすぐの赤ちゃんと中学生のお兄ちゃんが吐く原因は当然違います。また、夏と冬でも色々と原因を考えなくてはなりません。

 生まれて一週間までの赤ちゃんが吐く一番の原因は”初期おう吐”といって、ミルクや母乳を吐きますが、その他は元気で特に心配のないおう吐です。しかし、吐くものが黄色かったり、血液が混じったり、お腹がボウルのように張ったり、便が出なかったり、便に血液が混じったら大変です。産科、小児科の医者があわてて診てくれます。

 一ヶ月健診近くで吐くのに”幽門狭窄症”というのがあります。幽門とは胃の出口のところです。出口がソーセイジのように太く、厚くなりミルクが通らなくなります。哺乳の度に噴水のように吐き、体重が減少し、ひどくなると胃の部分が波打っているのが見えます。手術をすると、嘘のように2〜3日で元気になり、ミルクをゴクゴクと飲み出します。

 六ヶ月になるまでもよく吐きます。大人の胃は”逆し”の字のようになっていて逆流しにくくなっていますが、赤ちゃんの胃はドラム缶のようで、身体の動くままに胃の内容物は移動します。そして、胃から食道に逆流もしやすくなっています。赤ちゃんが元気でミルクをしっかり飲んで寝返りをして動き出すとよく吐くようになりますが、体重が増えて、ニコニコ笑っていたら心配はありません。

 六ヶ月から一才までの”おう吐”では、冬の季節での”おう吐下痢症”が最も多くなります。急に何回ものおう吐がはじまり、暫らくして、下痢になります。下痢は、白っぽく水のようになり、一日に10回以上出ることもあります。おう吐が激しい時には、点滴が必要となります。

 この月齢で最も気を付けないといけないのは”腸重積症”です。腸の中に腸が入り込んでしまいます。15分前後の間隔で急に泣き出しおう吐をし、元気なくグッタリしてきます。浣腸をすると、イチゴジャム状の血便が出ます。治療は高圧浣腸をして治しますが、外科的な処置が必要となることもあります。この月齢の赤ちゃんが定期的におう吐して元気なくなれば、浣腸をするか、病院に行って下さい。変な便が出たらオムツのまま持っていって下さい。そして、それがイチゴジャム状でしたら急を要します。

 今回は一才までで終わってしまいました。次回もおう吐について続けます。

 (卒園、入学の季節です。一度、母子手帳を見て予防接種が済んでいるか確かめて下さい。)

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