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NO. 167

おたふくかぜワクチン

平成22年 3月

 「おたふくかぜ」が流行っています。「おたふくかぜ(お多福風)」は日本語では「お多福」の様な顔になるので「おたふくかぜ」ですが、英語では「ムンプス(Mumps)」と言います。口が痛くて「ぼそぼそ言う(mumble)」から由来しているそうです。今回は「おたふくかぜ(おたふく)」について、特にそのワクチンについて書きます。
 「おたふく」は3〜5年ごとに流行しており、2001年、2006年に大きな流行がありましたから、今年(2010年)はそろそろ流行の年のようです。
 「みずぼうそう」には良く効く薬があり、保育園などを休む期間は5日間程度です。しかし、「おたふく」には薬がなく、1週間はお休みとなります。
 また、合併症も多くあります。代表的なものが無菌性髄膜炎で、10%〜15%に起こるとされています。この髄膜炎はほとんどが後遺症なく軽快します。最も困る合併症が難聴です。その頻度は報告により1000人に一人から15000人に一人といろいろですが、日本で年間推計650例の「おたふく」による難聴の発症があるとされています。日本で650人ということは、津山で1年に1人の子どもが「おたふく」で難聴になっている計算になります。
 難聴は耳下腺腫脹の数日前から7日後程度で発症することが多いようです。また、片方だけ難聴になることがありますから、気がつかずに経過することもあります。「おたふく」のあと電話で耳がしっかり聞こえているか確かめることも大切です。そして、残念なことにこの難聴は治ることはまずありません。今回、「おたふくかぜワクチン」を取り上げたのは、この難聴のことを知っていただきたいためです。
 「おたふくかぜワクチ」は任意接種ですから有料です。また、はしかワクチンの有効率は98%とされていますが、「おたふくかぜワクチン」の有効率は1回接種で89%前後、2回接種で95%とされています。
 また、以前はMMRワクチン(1989年開始)として「はしか・風疹・おたふくかぜ」の混合ワクチンが定期接種としてあったのですが、「おたふくかぜワクチン」の無菌性髄膜炎の合併症が多く1993年に中止となりました。
 最近では、ワクチンによる無菌性髄膜炎の頻度は0.01〜0.04%とされ自然感染の1000分の一程度です。また、残念ながら、ワクチンによる難聴もありますが、現在まで日本で3例の報告があるだけです。
 軽症化するため、流行規模を小さくするため、流行を早く終わらせるために、流行時期でのワクチン接種も勧めている教科書もあります。
  1歳を過ぎて、MRワクチン(はしかと風疹)が終わったら早めに「おたふくかぜワクチン」を受けてください。

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