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NO. 158

新しい日本脳炎ワクチン

平成21年 6月

 平成17年5月、日本脳炎ワクチンの接種は、“あまり積極的には勧めません”と厚生労働省が通知してきました。

  それまでの日本脳炎ワクチンはマウスの脳を使って作られていました。因果関係ははっきりしていないのですが、日本脳炎ワクチンを接種した後に70万〜200万回に1回程度、極めてまれにADEM(アデム、急性散在性脳脊髄炎)という病気が発症していたからです。

  マウスの脳を使うという事は、生きているマウスの脳の中で日本脳炎のウイルスを増殖して、脳の中から増殖したウイルスを取り出してワクチンに使用するのです。インフルエンザワクチンの場合は鶏の卵を使ってインフルエンザワクチンを増殖してワクチンに使っています。ウイルスは生きている細胞の中でしか増殖できないので、こうしていろんな動物が使われています。

  日本脳炎は過去10年間(平成11年から平成20年10月)に58件の発症がありました。発症はおもに中高年齢者となっていますが、平成18年に3歳児、平成19年には19歳の発生が報告されています。平成17年よりのワクチンの実質的な中止後に日本脳炎の発症が増加したわけではありませんが、過去10年間の40%は中国四国地方で発症しています。新しいワクチンの登場が待たれていました。

  この6月に待ち望んでいた新しいワクチンが出てきました。これは、アフリカミドリザルの腎臓由来の細胞を使っています。細胞を使って製造されていますので、マウスの脳の場合よりは副反応は減少するだろうと予想されていますが、まだ、ADEMに関する副反応については、現在のところ、不明です。

  しかし、日本脳炎ワクチンをこれまで一度も受けていない3〜7歳の子ども達、そして近年日本脳炎患者発生が多く認められている地域の子ども達では優先的に接種をした方がよいとされています。中国地方は発生が多くなっていますから、接種をした方がよい地域となります。

  日本脳炎ワクチンは1期に3回、2期に1回接種することになっています。1期は標準として3〜7歳(生後36か月から90か月未満)に3回です。
これから、日本脳炎ウイルスを媒介するコガタアカイエカ(水田などに発生する蚊の1種)が多くなる季節です。

 厚生労働省の“新しいワクチンは出来たが、あまり積極的には勧めません”の態度には変わりはありませんが、是非、日本脳炎ワクチンについて、かかりつけの小児科医師に相談して下さい。

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