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NO.109

卒煙外来

平成17年 4月 

 今回も、加治正行先生(静岡県立こども病院)の論文(小児科46:188−196)から。先生が開設している、タバコをやめられない子どもたちを治療する専門外来を「卒煙外来」と名付けているそうです。

T.子どもたちの喫煙状態

 ニコチンにはヘロインやコカインと同等の強い依存性があるため、タバコを吸い続けているとニコチン依存状態となって禁煙が非常に困難になる。成人の喫煙者ではニコチン依存状態になるのに5年から10年程度かかるが、中学生ではほんの数週間から数ヶ月でタバコがやめられなくなる。
 高校3年生では男子で喫煙経験者が55.7%、毎日喫煙する者が25.9%、女子でも喫煙経験者が36.7%、毎日喫煙する者が8.2%に達している。かつてのように「すう子は特別な問題児」ではなく、今や多数の「普通の子」が気軽に喫煙している。

U.卒煙外来の実際

 喫煙を始めたきっかけや喫煙状況を尋ねると、ほとんどの子どもは、ちょっとした好奇心や友人からの誘いなど、些細なきっかけで吸い始めたといい、また吸い始めてから数週間でやめられなくなったという子どもが多い。
[実例1]高校1年生、「2〜3週間経ったころ、・・『自分は、もうタバコなしではいられない体になってしまったんだな』と思いました」
「禁煙補助薬」としてニコチンガム、ニコチンパックが使われている。とくにニコチンパッチは未成年者にも安全で使用でき、有効であることが確認されている。しかも、未成年にたいしてはニコチン代替療法が短期間で効果を示す。すなわち、成人の場合にはニコチンパッチを1〜2ヶ月間使用することが多いのに対し、未成年者の場合は1週間前後の使用でニコチン依存症から脱却できるケースが多い。
 そして先生は、「子どもは、短期間でニコチン依存状態に陥りやすいが、逆に治療すれば短期間でニコチン依存から抜け出せるのが特徴である。ニコチン依存状態になった子どもは、治療を受けなければ一生吸い続けることになる可能性が大きいことから、子どもへの禁煙治療は『1週間で、その子の一生を変える』劇的な治療なのである」と括られています。
 高校男子の喫煙頻度の高さには今さらながら、驚きです。親のタバコを吸う姿をみて、吸い始める事もあります。前回の受動喫煙の問題も含めて、子どもの目からタバコを無くす事を考えてください。