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NO.16

アトピー性皮膚炎 U 食物アレルギー

平成9年 6月

 アトピー性皮膚炎に、食物アレルギーがどれだけ関与しているかは議論の多いところです。しかし、腸管バリヤーが未熟な1才から2才近くまででは、原因のかなりの部分は食物アレルギーです。そして、2才を過ぎ腸管の消化吸収とバリヤー機能が成熟すると、食べられなかったタマゴや豆腐を食べても皮膚炎の悪化は無くなり、年長児になると、原因の主体はダニとなります。

 食物アレルギーのアレルゲン(アレルギーの原因物質)をさがすには、皮膚で食物のエキスに対する反応を調べる検査(皮内テスト)、採血をして血液のなかの食物に反応する物質(免疫グロブリン)を調べる検査などがあります。どの検査もからだの中で起こっている反応の一部を見ているだけです。最も大事なのは、ある食物を食べたら皮膚にブツブツがでるとか、かゆくてからだをポリポリかくなどの症状があるかです。その症状の出る時期も、食べて30分から2日間ぐらいの幅があります。血液検査が陽性というだけで食物制限をすると3種類も4種類もの主要な食物が食べれなくなることがあります。どんな物を食べるか考えるだけで親子ともノイローゼとなります。アトピー性皮膚炎があり、検査で陽性となった時には、まずその食物を少量だけ食べて、2日間は皮膚の変化を見ます。何事も起こらなければ摂取量を増加してみてください。アトピー性皮膚炎が治っても検査では陽性となる事もあるのです。しかし、タマゴだけは、検査が陽性でアトピー性皮膚炎があれば少なくとも生後10ヶ月までは摂取しないでください。

 タマゴ、牛乳、大豆がおもなアレルゲンです。その他に、小麦、米があります。特にタマゴは離乳食では貴重な栄養源であり、昔から一番に使われていました。そして、タマゴを使った離乳食の開始が早くなった事も、アトピー性皮膚炎が増加した原因と言われています。タマゴでは、黄身より卵白が悪者であり、生の卵白は最悪となります。アレルギー体質の子供に生のタマゴかけご飯はだめです。そして、タマゴ料理は十分に火を通して下さい。どんな食物でも火を通せば通すほどアレルゲンにはなりにくくなります。また、妊娠の後半から授乳期にかけて母親がタマゴの摂取を控えると赤ちゃんのアトピー性皮膚炎が少なくなるといわれています。昔からの変らぬ値段で売られ栄養満点のタマゴも、アレルギーの話となると形無しです。

 アレルギーの検査で陽性だからといって食べれない事はないのです。主治医の先生とよく相談をして、食物チャレンジで皮膚の変化を見てください。しかし、タマゴとアトピー性皮膚炎は強く関係があるようです。お兄ちゃん、お姉ちゃんにアレルギー体質がある時の離乳食では、タマゴはなるべくひかえましょう。

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